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2024.03.05
simples×ADI コラボディナー2.
コラボディナー二日目の夜は、生音演奏とともにお届けしました。キーボードとサックス、二人のミュージシャンのジャズ演奏の中、食と音楽の融合をご堪能していただけたと思います。お客様のすぐ後ろで演奏をしていたため、音の大きさに驚かれていましたが、「音色がすごくいいので、心地いい」という、ご感想が印象的でした。一体感があるものは、ノイズにならないのです。コース料理の提供をしながら、三十分の演奏を四、五回ほど繰り返し、とてもいい空気感でした。料理と音楽が絶え間なく流れる空間は、長年の僕の願いでもありました。
イタリアでの修行時代、海のレストランに勤務をしていました。週末土曜日にはジャズ演奏があり、レストランが賑わいます。印象的だったのは、演奏前にミュージシャン達が食事をしている姿です。彼達はとても誇らしい様子で、食事とワインを楽しんでいました。その食事こそが、彼達のギャランティでした。対価とは、金銭のやり取りが全てだと思っていたので、カルチャーショックでした。
演奏前に食事を嗜み、演奏が終わったら、また客席で料理を嗜む。ついさっきまで演奏をしていたミュージシャン達が、他のお客さんとともにリラックスして過ごす。その一連の流れがとても自然だったのです。シェフとミュージシャンが、お互いの技術をリスペクトし合っていることを感じました。今でも記憶に色濃く残っている出来事の一つです。いつか自分のお店を持つことができたら、取り組んでみたいと思っていました。
コラボディナー当日まで、カンチャンシェフとともに宿題を出し合い、擦り合わせていきました。シェフには、即興の演出が得意なタイプと、計画的な組み立てが得意なタイプがいます。僕達は、前者にあたります。二人で作っていると、尽きることのない発想が湧いてくるのです。その感覚を支えるのは、お互いの経験値かもしれません。なにかを掛け合わせるには、成熟していないと難しい面がある。即興で仕上げていくため、場合によっては思いもよらないものが出来上がる可能性があります。僕達がツーカーでやり取りができたのは、感覚がリンクしやすかったこと。それは、積み重ねてきた時間にあるのかもしれません。
コラボレーションの楽しみは、何よりも化学反応です。共に料理をする嬉しさや自信、お客様の笑顔や空間、あらゆる要素が融合するほど、場の空気感が高揚していきます。お客様の反応を目の当たりにする瞬間は、とてもライブ感があります。
僕達は、食を通してお客様に喜んでもらいたい。今までにない、新しいものや体験に触れてほしい。そして、その瞬間を支えていただいている生産者の方々のことも、伝えていけたら光栄です。食は生きる営みだからこそ、様々な可能性があります。コラボディナーを通して、その可能性をさらに実感しました。どちらのファンの方々から見ても、面白いものが出来上がったのではないかと思います
ご来場頂きましたお客様方、この場を借りて感謝を申し上げます。足をお運びいただき、ありがとうございました。描いていることは、まだまだ沢山あります。今後も食に関する新しい取り組みを開催していくので、是非、ご参加いただけましたら嬉しいです。